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イノベーションのジレンマ クレイトン・クリステンセン (著)

2006 年 4 月 27 日


イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすときHarvard business school press

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき

 経営本やMBAに関する書籍では何度も引用されているこの本。先日、土井さんのクリエイティブ講座でも話に出たこともあり、改めて読んでみました。

 ここでは、「すぐれた経営こそが、業界リーダーの座を失った最大の理由である」とし、その理由として以下のように述べています。

これらの企業は、顧客の意見に耳を傾け、顧客が求める製品を増産し、改良するために新技術に積極的に投資したからこそ、市場の動向を注意深く調査し、システマティックに最も収益の高そうなイノベーションに投資配分したからこそ、リーダーの地位を失ったのだ。

詳細は著書をお読みいただくとして、気になった点を挙げておきます。

■「すぐれた経営者による健全な決定が、大手企業を失敗へと導く理由」

 ここでは、優良企業が新興企業にとって変わられた理由が分析されています。まず、2つの技術を定義しましょう

「持続的技術」

製品の性能を高めるもの。持続的技術の中には、断続的なものや急進的なものもあれば、少しずつ進むものもある。

「破壊的技術」

少なくとも短期的には、製品の性能を引き下げる効果を持つイノベーション。破壊的技術は既存製品の製性能を下回るが、低価格、シンプル、小型で、使い勝手が良いために、少数の新しい顧客に評価される

 破壊的技術とは必ずしも既存の技術より性能が高いわけでもありません。それでも延びていく理由を本書ではハードディスクを例に挙げ、その技術とメインプレーヤーがどう変わってきたのか克明に解説しています。

■ハードディスクの例

 ディスクのサイズは12インチから、8インチ、5.25インチ、そして2.5インチと変化していきますが、大きなディスクの方が容量もアクセス速度も優れています。それでも小さなドライブが主流になったのはコンピュータ自身が、メインフレームから、ミニコン、デスクトップパソコン、ノートパソコンへとシフトしていったからです。
そして、最初は割高だった小さなドライブも出荷台数が増えることによりコストが下がり、次第には上の市場を侵食していく事になります。

■今は無きDECの例

 もう1つ、Compaqに買収され、今はHPになったDECの例を挙げておきます。(DECとは? from Wikipedia)

 (もう10年近く前になりますが)元社員としてこの話は、かなり理解できます。当時、メインフレームが主流であった時代に、ミニコンで対抗したDECは順調に、その売上高でIBMに次ぐ存在となりました。しかし、結局その座はデスクトップパソコンに明け渡すことになります。

DECがデスクトップパソコンへの参入を失敗した理由として、こんな記述があります

「DECは、主流組織の中からデスクトップ・パソコン市場へ参入しようとしたため、二つのバリュー・ネットワークに伴う二つの異なるコスト構造を両立させなければならなかった。同社は、高性能製品では競争力を保つためコストが必要だったので、下位のパソコン市場で競争力を保てるほど間接費を削ることが出来なかった」

 DECは何度と無くパソコン市場に進出しますが、結局メインビジネスとはならず、その後Compaqに買収されることになりました。私も在籍していた間、パソコンはメインビジネスとは思っていませんでしたし、おそらく他の社員もそう感じていたのでしょう。会社全体の意識を変えるのも破壊的なイノベーションが必要なのだと思います。

■HPのインクジェットプリンタ

 成功した例としてはHPのインクジェットプリンタがあります。
 この本では、「自殺による生き残り」とされていますが、当時HPはレーザージェットプリンタで圧倒的に市場をリードしていました。インクジェットプリンタは(今もそうですが)レーザージェットより遅く、解像度は低く、1ページあたりの印刷コストは高く、そして粗利益も低い。しかし、プリンタ本体はレーザージェットよりはるかに小型で、価格も低く今後の主流になるかもしれないと思われていました。

 結局HPは既存のプリンター部門の中でインクジェットプリンタを開発しようとせず、別の地域に完全に独立した組織を新設し、インクジェットプリンタを開発します。これが、DECとの大きな違いです。

 その後のHPはアメリカではご存知の通り、大きなシェアを取っています。インクジェットはレーザージェットのユーザを奪ってしまっているかも知れませんが、その決断が無ければ、今のHPのプリンタシェアはこれほどまでにはならなかったでしょう。

■デジタルカメラは?

 最近の例としては、デジタルカメラも大きなイノベーションです。既に銀塩カメラはデジタルカメラに取って替わったといって良いでしょう。かつて小西六、後にコニカ、現在はコニカミノルタと、輝かしい歴史を持つ同社もフォト事業からも撤退しました。

■ネット証券は?

 今後の変化として、土井さんも言ってましたが、ネット証券はどうなっていくのか。大手証券会社が得意とする富裕層はネット証券へ流れていかないのか?その動向を見て行きたいです。

■自分のコア・コンピタンスを見つめるために

 この本は技術的な記述が多いため、特にコンピュータ業界をご存じない方は読みにくいかもしれません。しかし、その分からない部分を飛ばしてでも、読む価値はあると思います。自分(自社)のコア・コンピタンスは何なのか、既に活躍している企業(や人)にもイノベーションのジレンマはあります。進出したくても出来ない、その裏を読むにも、この本は有効です。(って、これは土井さんの受け売りですが)





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